INTERVIEW

インタビュー

2025.06.24

VALUE〜5つの挑戦から生まれる、新たなブランドづくり〜

日出手袋工業株式会社は、五本指ソックスをはじめとした靴下や手袋の製造・販売を一貫して行う老舗企業です。企業のフロントラインに立つ川端さん夫妻は、日々の業務に追われるなかで、「もっと良くしていきたい」という思いと、社内の温度差との間で模索を続けていました。そんな折に出会ったのが「VALUE」の取り組み。多岐にわたる実践を通して、企業としての軸を見出していくプロセスについて、お二人にお話を伺いました。 

――― まずは会社の概要と、ご自身の業務について教えていただけますか? 

川端昌徳さん:日出手袋工業株式会社で取締役専務をしております、川端昌徳と申します。弊社は手袋、軍手、作業用手袋、靴下、特に五本指ソックスなどの製造と販売を自社で一貫して行っている会社です。私は主に、工場内のマネジメントや配達周りの業務を担っております。 

川端紀子さん:日出手袋工業株式会社の川端紀子と申します。私はネットショップのお客様対応や、特注品の問い合わせ対応、生産管理などを担当しています。

「自分たちに必要なこと」が言語化されていた

――― VALUEに参加されたきっかけや、その当時の課題感について教えてください。 

川端昌徳さん:きっかけは、昨年の春ごろに和歌山のよろず支援の方から「日出さんに合うと思う」と声をかけていただいたことでした。そのときは、デザイン経営って何?というくらい、まったく知識はなかったんです。でも、VALUEのチラシを見せてもらったときに「なんだかすごそうだな」とは感じていて。キックオフに参加してみたら、「まさに今、自分たちがやらないといけないこと」がたくさん言語化されていたんです。 

――― 社内にはどのような課題を感じていたのでしょうか? 

川端昌徳さん:特注品の対応に日々追われていて、新しいことに取り組む余裕がなかったんです。お客様と直接関わっているのは私たちフロント部隊だけで、工場内の人たちとの温度差もあって。「何かしたい」という気持ちをどう伝えたらいいのか、迷いながら過ごしていました。 

自社の「当たり前」が価値に変わった

――― VALUEに参加してみて、どんな気づきや学びがありましたか? 

川端紀子さん:正直、今でも「デザイン経営って何?」って一言で答えるのは難しいんです。でも、今まで会社のことは「自分たちだけで考えて、自分たちだけでやる」のが当たり前だと思っていたんですね。それが、外部の人と関わって、さまざまな視点から意見をもらうことで「これまで見えていなかった価値」に気づくことができました。 

――― 外部の人を巻き込むことへの不安はありませんでしたか? 

川端昌徳さん:ありました。外部の人に会社の中を見られるのって、すごく勇気がいります。でも、支援者の方々が丁寧に寄り添ってくださって、自分たちが「普通だと思っていたこと」が実は評価されるポイントなんだと気づけました。それって、自信につながるんですよね。支援してくださった皆さんとの出会いは、本当に財産です。

社内を巻き込む5つのアクション

――― 実践フェーズでは、具体的にどのような取り組みをされたのですか? 

川端昌徳さん:大きく分けて5つあります。まずは「DXの推進」です。在庫管理や仕様確認など、これまでアナログでやっていた業務を効率化するため、仕組みの見直しを進めています。特に特注品の対応が増える中で、時間のロスが課題になっていたので、ここをどう整えるかがポイントでした。 

――― 他にはどんなことに取り組まれましたか? 

川端昌徳さん:2つ目は「チームづくり」です。コアメンバーを選出し、現場と同じ目線で情報発信することで、社内全体の意識を共有できるようになりました。3つ目は「ラボ事業」です。お客様から使い終わった手袋を回収し、自分たちの視点で手袋の使われ方を研究しながら、新たな改善点を提示する取り組みです。加えて、4つ目は「SDGs関連」です。原料ロスゼロの実現や、リサイクル素材を積極的に取り入れることができればと考えています。最後に、5つ目は「広報関連」です。SNSを活用した広報、製品ラインナップの見直しにも着手しています。どれも少しずつですが、確実に進めています。

「使いたい」と思ってもらえるブランドへ

――― 今後の展望や、取り組んでいきたいことについて教えてください。 

川端昌徳さん:まずは、今進めているDXやチーム作り、ラボ事業などをしっかり継続していくことですね。その上で、「日出手袋を使うことがステータス」と感じてもらえるような、ブランドづくりをしていきたいと考えています。そうやってファンを増やしていくことで、会社の価値を上げていけたら嬉しいですね。 

――― 中長期的には、どのような展開をお考えですか? 

川端昌徳さん:どんどん継続が難しくなっている手作業やミシンの技術を社内で育てていくことが必要だと思っています。今後は、展示会などにも積極的に出て、自分たちの製品を客観的に評価してもらいたいですね。そして、新しい販路を開拓し、手袋のある暮らしの豊かさを多くの人に伝えていきたいです。VALUEで得た経験はまだ始まりにすぎません。ここから一つひとつ、実践を積み重ねていきたいです。

インタビュイー

日出手袋工業株式会社
(左から)川端昌徳、川端紀子

日出手袋工業株式会社は和歌山県有田市にある大正7年創業の100年以上つづく手袋靴下製造工場です。 時代の変化に対応しながら品質を第一に、こだわりの手袋靴下を自社工場で作っています。 天然繊維を主体とし、お客様の「こんな手袋を使いたい」という要望を長きにわたり得たノウハウと実績で形にし様々な仕事や生活を支えています。 これからも”使い続けたいを生み出し続ける”企業であり続けます。