有限会社ナカムラテニスプラニングは、和歌山県でテニススクールの運営を行いながら、テニス用品の販売なども手掛ける会社です。事業承継のタイミングで「会社のビジョンをどう形にし、共有していくか」という課題に直面していた神前星子さんは、VALUEへの参加を決意しました。ビジョンの策定と社内への浸透を目指しながら、新たな仕組みづくりやブランドイメージの確立に向けた挑戦についてお伺いしました。

コートの外から支える、スクールの“日常”を整えるしごと
――― まずは会社の概要と、ご自身の業務内容について教えていただけますか?
神前星子さん:有限会社ナカムラテニスプラニングの代表取締役を務めております、神前星子と申します。私たちは和歌山県でテニススクールの運営を行っている会社で、スクール生に向けたレッスンの提供に加えて、テニス用品の販売なども行っています。私はスタッフのマネジメントや施設管理、シフト管理など、全体を見渡すような立場で業務に携わっています。現場で働くコーチやフロントスタッフたちがスムーズに仕事できるよう、裏方的なサポートを中心にしていますね。
――― VALUEに参加されたきっかけや背景について教えていただけますか?
神前星子さん:参加を決めたのは、キックオフイベントの少し前に、タカショーデジテックの古澤さんのSNS投稿を見たのが最初です。キックオフイベント内で中川政七商店の中川会長のお話を伺う中で、「ビジョンをつくる」「言語化する」ことの重要性について初めて意識しました。それに加えて、VALUEの過去参加者の話を聞いていると、みんなキラキラしていて素敵だなと思って。ただ、ある方が「寝れないほど忙しくなる」と話していていたので、かなり覚悟を決めて申し込みました。

――― 社内でも何か課題感をお持ちだったのでしょうか?
神前星子さん:はい。ちょうど事業承継の時期で、「自分がこれからどんな会社をつくっていけるか」という問いに答えを出せずにいたんです。これを一人で考えるのは難しいと感じていたので、プロの方に伴走してもらえることにすごく魅力を感じました。
「この会社を、どう育てていく?」 事業承継の問いから始まった
――― 実際に参加されてみて、どんな学びや気づきがありましたか?
神前星子さん:デザイン経営という言葉自体、VALUEで初めて聞きました。キックオフイベントでも「なんとなく良さそう」とは思ったけれど、正直よく分かっていませんでした。1回目のワークショップでもピンとこなくて…。でも、講師の澤田さんがインフィニティモデルを使って繰り返し説明してくださったことで、何度も反芻していくうちに、少しずつ理解が深まっていったという感じです。
――― ワークショップの中で、印象に残っていることはありますか?
神前星子さん:チームキャンバスベーシックのワークが特に印象に残っています。用意されたシートがまったく埋まらなかったんですよ。「こう言い換えてみて」とか、「こういう解釈もありますよ」と助けてもらいながら、ようやく少しずつ埋めていくような状態でした。でも、綺麗に埋めることよりも、考えるプロセスそのものが自分にとってすごく大事だったと感じました。最終発表まで進めたのは、あの「うまく埋められない時間」があったからこそだと思っています。

――― 実践フェーズや伴走支援の中で、どのような取り組みを行ったのですか?
神前星子さん:まずは何より「ビジョンの策定」でした。これは最初から明確に目的として持っていた部分で、基礎ワークショップの中で形にしていきました。その後は、そのビジョンを社内にどう浸透させるかが課題でした。当初は成果報告会までに、全スタッフを集めた全社会議を開こうと考えていたんですが、スタッフとの温度差やタイミングを考慮して、年末の忘年会のタイミングでフランクに発表する場を設けました。
試合じゃない、未来を組み立てる“グランドスラム”
――― 少しずつ、でも確実に進めていった感じですね。
神前星子さん:はい。その後、1月には社員を対象に「グランドスラム会議」と名付けた対話の場をつくりました。そこでは、スクール生がゲーム感覚でステップアップできる仕組みのアイデアが社員から出てきたりして。「大きな声で挨拶できたらポイント」みたいな、技術だけではなく、自己肯定感の向上に繋がる仕組みがあればいいなと思っています。こうした社内から出てきた声から、次に取り組みたいことが浮かび上がってきているというように感じています。
――― これから取り組みたいことや、目指している将来像について教えてください。
神前星子さん:目の前の最初のステップは「ビジョンマップ」を完成させることです。つくったビジョンを言葉だけにせず、視覚的にわかりやすく伝える形にして、それをホームページやパンフレット、広告などに展開していきたいと思っています。デザインもできるだけ統一して、スクールとしてのブランドイメージを明確に打ち出していきたいです。

――― その先にはどのような展望をお持ちですか?
神前星子さん:少し先の話にはなりますが、「健康の見える化」にも取り組んでいきたいです。子どもたちや保護者の方に対して、ただテニスをするだけでなく、体力や健康状態を把握できるような仕組みがあればいいなと。体力測定のような指標を取り入れて、通ってくださる方々に安心や満足を届けたいと考えています。
インタビュイー

有限会社ナカムラテニスプラニング
神前 星子(こうざき せいこ)
和歌山市出身。神戸女学院大学卒業後、2007年にミズノ株式会社へ入社。ラケットスポーツの部門で3年間勤務したのち、2010年に家業を継ぐため和歌山にUターン。
現在は父親と共に共同代表を務め、事業承継に取り組んでいる。夫・2人の娘と暮らす4人家族。
経営者としての視点に加え、現場で働くコーチとして、また一人の母親として、「テニススクールはどうあるべきか」を日々模索しながら、地域に根ざしたスクールづくりを進めている。